
出典:2016年7月2日産経ニュースより
勝負を諦めた羽生棋聖!しかし形勢は互角だぞ!!
中盤を優勢に進めた羽生棋勢だったが、終盤に進むにつれて形勢は互角に戻されます。
永瀬六段の粘りの手で互角にまで持ってきた終盤戦。
羽生棋聖は諦めてしまいます。
しかしCOMは互角の判断。
はたして! COMの判断は正しいのでしょうか!?
第87期棋聖戦五番勝負 第3局
第87期棋聖戦第3局は、7月2日に静岡県沼津市でおこなわれました。
1勝1敗のタイで迎えた第3局は誰もが注目するところ。
勝ったのは永瀬六段。
2勝目を挙げて初タイトル獲得に王手です。
では、棋譜をフラ盤でご覧ください。
【将棋棋譜】羽生善治棋聖 vs 永瀬拓矢六段
Android(OS)端末で[このプラグインはサポートされていません。]と表示される方はこちらを参考にしてください。
⇒ Android 4.4でもFlashをネイティブ再生できるブラウザ「FlashFox」
第3局は、羽生棋聖の先手番。
横歩取りの戦型へと進みました。
今季、羽生棋聖の横歩取りの戦績は1勝6敗とかなり悪い!
それでも敢えて横歩取りを採用するところが羽生棋聖である。
相手の得意戦法に立ち向かっていく姿は健在です。
対する永瀬六段は、1局目の横歩取り(千日手)に決着をつけます。
では、2人の戦いを見ていきます。
COM棋譜解析
コンピュータ将棋で棋譜解析をしていきます。
思考エンジンは技巧です。
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早速、棋譜解析したグラフを見てください。
76手目、ノータイムで指した永瀬六段の△9五飛から形勢は羽生棋聖有利となりましたが、羽生棋聖の悪手もあり形勢は互角となります。
最後、互角と思える形勢判断でしたが羽生棋聖が諦めたかの様な指し手に、永瀬六段が勝ちました。
棋譜解析する局面は3つ。
●永瀬六段の自然な一手だった76手目の局面
●COMが羽生棋聖に悪手を評価した91手目の局面
●終盤、羽生棋聖が諦めた115手目の局面
COM(技巧)で深く検討、解析していきます。
76手目の解析
すごく自然な一手ある。
飛車が活用できるのだから当然の一手と思われます。
事実、永瀬六段もノータイムで指しました。
しかし、COMの評価は疑問手!!(125⇒428)
最善手は何だったのでしょう?
検討してみます。
△8五桂以下の読みは、▲3五香△7七桂成▲同金△4五香▲3三香成△同銀▲5五桂△5二角▲4五飛△同歩と進みます。
評価値は(88)の互角を維持。
飛車金交換の駒得だからこちらが良いのでしょうか?
私にはサッパリ分かりません(*´ω`*)
誰も指摘しなかった△9五飛車
この△9五飛車を疑問手だと思った人はいなかったのではないでしょうか?
ニコ生解説の木村一基八段も現地の検討陣も、この手については触れていません。
この局面はどちらが有利か分からないし、指し手も早かったので無理もありませんね。
91手目の解析
技巧が悪手を表示!!
評価値は(1126⇒550)、優勢だったのが有利へと変わります。
この局面、他にどの様な手があるのか技巧の候補手を6手にして検討してみました。
技巧の最善手は▲5二銀成。続いて▲5四桂も▲6五桂も有力でしたが、羽生棋聖の指した▲6五角は5番目(※4番目)の候補手でした。
いくつかあった手のうちで、選りによってなぜ!って感じです(*´Д`)
※第3候補手に▲5二銀不成がありますが、▲5二銀成と一緒なので候補から外します。
粘る永瀬六段! 崩れていく羽生棋聖!!
この手を境に、永瀬六段は粘りの将棋へと切り替へると、羽生棋聖の形勢がどんどん悪くなっていきます。
永瀬六段の粘りの受けに対応しきれないのか? それとも羽生棋聖は自分のミスに気づいて動揺してしまったのか!?
115手目の解析
3手前の112手目△9六龍を見て、羽生棋聖は諦めています。
評価値(10)でまだ互角の局面でした。
115手目△5六馬は、玉の逃げ道をふさぐ大悪手!!
評価値(-285⇒-2641)
羽生棋聖は頑張れなかったのでしょうか?
技巧は頑張れると言っている。
▲5六歩と逃げ道を作ったあと大乱戦になる読み筋だが、評価値は(-186)と互角で勝負できることを示している。
以下、技巧の読み筋
▲5六歩△3四歩▲2五香△5八銀▲7六銀△同龍▲5七玉△2四香▲同香△同金▲6八金△6七銀打▲2六金△6八銀不成▲4六玉△2五歩▲3六金△3二香▲5二と△3三金▲4一桂成△2二玉▲3四飛△同金上▲同歩△同金▲4二と△4七銀成▲同玉までを読んでいます。
しかし、実際は・・・。
勝負は見えた! これも大局観!!
勝てないと直感的に思うのも大局観なのだろうか?
永瀬六段の△9六龍を見て、ニコ生解説の木村八段も後手よしとしていたが、プロの先生方から見たらもう先手は勝てない局面に映るのだろうか?
どうにも腑に落ちないので、技巧の最善手▲5六歩からCOM同士の1分将棋で戦わせてみました。結果は、後手の勝ち。
しかも早い段階で優劣がつきます。
▲5六歩に△3四金と香車を歩ではなく金で取ってしまうのが好手で、一気に後手が勝勢へとなります。
△9六龍と引かれたあの局面、羽生棋聖が頑張れないと思った。
これも大局観なのかと、あらためてプロ棋士の凄さを思い知らされました。
棋譜解析まとめ
『最後に、コンピュータがすべて正しいとは限らないので、あくまで一つの形勢判断として参考にしてもらえたと思います。』
このコメント、いつも棋譜解析まとめの最後に書いていました。
今回の対局はまさにその通りになりましたね((+_+)) 評価値だけを見てみると一喜一憂してしまいます。
複雑な局面では、コンピュータも読み切れない局面や、読まない手があるのが分かりました。
終盤にもコンピュータ将棋の弱点があるのかも知れません。
第3局は、永瀬六段が粘って掴んだ勝利でしょう。
一方、羽生棋聖は変ですね。第2局で復活したかに思えたんですけど・・・。指し手が悪いほうにいってます。指運がないのでしょうか? それとも・・・。
この先は言わないでおきます。
第4局を待ちましょう。
最後にもう一度、コンピュータがすべて正しいとは限らないので、あくまで一つの形勢判断として参考にしてもらえたと思います。
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