
出典:2016年5月31日朝日新聞デジタルより
互角の終盤戦!!本当に羽生名人は負けていたのか!?
序盤から中盤にかけて有利を維持してきた羽生名人ですが、73手目▲9六飛と飛車の逃げ道を間違えて形勢は互角へと戻ってしまいます。
そのまま終盤戦へと突入し、勢いに乗った佐藤八段が100手で羽生名人を投了に追い込みました。
投了4手前までは互角の形勢判断(COM)!!
はたして羽生名人に勝機は無かったのでしょうか?
※対局者の称号・段位は対局時のものとします。
第74期名人戦七番勝負 第5局
第74期名人戦第5局は、先週の5月30・31日に山形県天童市で行われました。
中盤、不利だった局面を佐藤八段が我慢して乗り切り、終盤に逆転して勝利をつかみました。
佐藤天彦八段が4勝1敗で第74期名人戦を制し、名人のタイトルを奪取!! 自身も初のタイトル獲得です。
おめでとうございます(*’▽’)
それでは第5局の棋譜をフラ盤でご覧ください。
【将棋棋譜】羽生善治名人 vs 佐藤天彦八段
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第5局は羽生名人の先手番です。
カド番に追い込まれた羽生名人は負けられない対局。
戦型は横歩取り! 第3局・4局と苦汁を飲まされた羽生名人は横歩取りリベンジに挑みましが・・・。
終盤、心が折れてしまったかのような投了。
劇的な幕切れとなった最終局はどのような対局だったのでしょうか!
COM棋譜解析
コンピュータ将棋で棋譜解析をしていきます。
今回もAperyの思考エンジンで解析しました。
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では早速、棋譜解析したグラフを見てください。
名人戦5度目の横歩取りは、後手の佐藤八段がいつもの△7二銀型の形ではなく、△6二銀型の中原囲いを選んで工夫してきました。
局面は前例が少なく、未知への局面へと進んでいきます。
57手目、羽生名人が動き、▲7四歩からの旨い指し回しから羽生名人が有利に中盤をすすめます。
そして問題の73手目!!
羽生名人が▲9六飛と逃げたことによって角が取られることになり形勢は互角へ。
終盤、Aperyはまだ互角の形勢判断のなか、羽生名人の疑問手(Apery)の▲4五飛(97手目)で形勢が佐藤八段有利へと移りました。
それからわずか3手後の△3六歩を見て羽生名人の投了。
今回検討したい局面は2つ!!
羽生名人が見落としたと思われる73手目と、まだ頑張れたかもしれない97手目を深く検討していきたいと思います。
73手目の解析
▲9六飛のあと△6四歩▲7六角△9五歩▲同飛△7四飛で羽生名人は、7六の角取りが受けれない状態になってしまった。
評価値も互角に戻ります(594⇒232)▲9六飛の代わりに▲6六飛なら角は助かるが・・・。
棋譜解析でのAperyの読み筋は▲9三歩成として飛車を見捨てて勝負してきます。
さらに深く検討してみます。
深く検討してもやはり飛車を見捨てて▲9三歩成である。
評価値は(400)、依然として先手の有利をキープする自信があるようです。
67手目の▲6五角打ちが悪かったのか?
終局後、羽生名人は、▲6五角打をあまりよくなかったとコメントしています。
しかしAperyは67手目の▲6五角打から72手目の△4五銀までの読み筋が一致している。
そうです!! Aperyは▲6五角打ちから▲9三歩成まで本筋として読み切っているのです。
▲9三歩成以下の読み筋は、△4六銀▲同銀△3七歩▲同銀△4五桂の展開を読んで先手有利のようです。
97手目の解析
96手までAperyは互角の形勢判断(-10) !!
羽生名人の97手目▲4五飛車と銀を取った局面にAperyは疑問手をつけています。(-10⇒-341)
終盤での疑問手は、ほぼ負けに直結します。
▲4五飛に変わる勝負手がなかったか検討してみたいと思います。
最善手は、▲2三角と打って△3二銀に▲同角と銀を取って▲6九に受ける手だが悪戯に手数をのばすだけのようです。
評価値も悪くなりました。(-190)
▲4五飛は形作り
97手目の▲4五飛から、わずか3手後の100手目△3六歩打をみて羽生名人の投了。
1分将棋の時間がない局面ならわからないが、時間を残している佐藤八段を前にしては、投了もやむを得ない局面でしょう。
棋譜解析まとめ
第5局は羽生名人らしからぬ対局となり佐藤八段の勝利となりました。
これで通算4勝1敗で佐藤八段が名人位奪取。
第74期名人になりました。
シーズン通してみて、羽生名人らしからぬ局面もありましたが、佐藤八段の強さの方が光った名人戦ではなかったでしょうか。
最後に、コンピュータがすべて正しいとは限らないので、あくまで一つの形勢判断として参考にしてもらえたと思います。
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